【Event Report】“ Field to Glass 畑からグラスまで ” 京都産100%を目指すプロジェクト「K100」始動!

8月30日(木)、京都のビールシーンに新たな旋風を巻き起こしそうな一大プロジェクトの発表会が開催されました。その名も『京都産原料100%ビールプロジェクト』、通称「K100」です。今回は、K100発足発表会と懇親会の模様をお伝えします!

 

第一部、発表会の会場は京都府庁の旧本館旧議場。

 

すごく立派!

旧本館は今から約100年前、明治37年に建てられて、昭和46年まで京都府庁本館として使用されていた建物です。なんと、現役の官公庁としては日本最古のものだとか! 国の重要文化財にもなっていますが、現在も執務室や会議場は現役で活躍しているそうです。

 

まるで西洋の迎賓館のようですね。

そんな厳かな会場に、13時を過ぎて関係者が集まってきました。

 

新聞やテレビ各社など、報道陣も続々と。

参加者は議長席と対面した半円状の議員席に座ります。立ち見の方もいて、注目度の高さがわかりますね。

 

プロジェクトに参加する団体の代表です。

理事者席の手前はJA京都や京都与謝野ホップ生産組合などの原料生産者、研究機関の京都学園大学教授陣、そして京都府副知事や亀岡市副市長、与謝野町町長などの自治体代表者。

議長席から奥が、京都府下の醸造者です。

本日出席したブリュワリーは、「黄桜京都麦酒」、「京都町家麦酒醸造所」、「一条寺ブリュワリー」、「西陣麦酒」、「Kyoto Beer Lab」、そして「スプリングバレーブルワリー京都」の6社。他に「丹後王国クラフトビール」、「ウッドミルブルワリー・京都」もプロジェクトに参加しています。

 

そして13時30分、京都府副知事の山内修一氏の挨拶で発表会がスタート。

 

山内副知事「京都におけるビールの歴史は大変古く、明治3年に京都舎密局(せいみきょく)で醸造研究が始まり、明治10年に全国的にも早い段階で産業としてビール醸造が始まったことから、京都はビールにおいて先見性のある土地だといえる。それから140年の時を経て、このような歴史と格式のある旧本館で、京都の原材料を使った豊かなビールを目指すプロジェクトが発表できたのはとても光栄ですばらしいこと。生産者と研究機関である大学、そして醸造者や産業に関わる人々が手を取り合い、新しい文化がこの京都で花開くことで、地域活性につながることを期待したい」

 

「亀岡市に建設予定の『京都スタジアム』などで、サッカーやラグビーを観戦しながら京都産100%のビールを飲みかわすなど、さまざまな文化交流の場でK100ビールがフックとなるだろう」とスピーチした山内修一副知事。

 

続いて、K100の発起人であり、プロジェクト事務局代表を務める、京都学園大学バイオ環境学部 発酵醸造学研究室の篠田吉史准教授より、プロジェクトの概要が説明されました。

 

「K100」プロジェクトとは、ビールの原料すべてを地元の京都で供給し、生産者である農家や原料の加工メーカー、造り手であるブリュワリー、提供者の飲食店や小売店を通じて消費者に届け、さらに印刷やパッケージ、広告流通や観光などのビール周辺産業にも波及効果を及ぼす「地域の殖産興業」を目指すというもの。中長期的には、京都府全域でのビールを軸とした経済発展を願うビジョンを掲げています。

 

それぞれの担い手の顔が見える近さと関係性で ―― トレーサブル(Traceable)

地域に根差した農業や環境を守りながら ―― サスティナブル(Sustainable)

地域住民や訪れた人が高品質で個性的なビールを楽しみ、地域の食品文化を高いレベルで反映させる ―― ローカル(Local)

 

Field to Glass(畑からグラスまで)をキャッチフレーズとして、京都産ビールの地産地消とビールを軸とした関連産業の高度化を目標とするのがK100

 

篠田准教授「近年のクラフトビールブームによって、各地でさまざまなビールが楽しまれるようになった。京都でも小規模醸造所が増え、各ブリュワリーでこだわりのビールがつくられているが、現状では国産大麦は大手ビール会社とJAの契約栽培に限られおり、ほぼ100%輸入に頼っている。2015年から栽培が始まった与謝野町のホップも一定の評価はあるが収穫量が足らず、栽培者を増やして収穫量をあげると同時に加工処理施設も必要。そこで、原料生産者と研究者、ビール醸造所が連携して京都で100%の原料調達を可能のするための方策を話し合い、課題解決と発展拡大に臨みたい」と意気込みを話しました。 

 

京都府内では唯一ビール大麦の栽培を続けている亀岡市の大学に着任し、広大な麦畑に感動したという篠田准教授。100年以上も栽培を続けるビール大麦の収益性を上げるために、ビール大麦「サチホゴールデン」の開発者で同大学の河田尚之教授とともに、ビール大麦の栽培支援と製麦研究をしています。

 

同大学では醸造プラントやモルティングシステムを導入しており、いずれ京都で大麦の加工(製麦)を行う「京都モルトハウス」も設立準備中だそう。京都に由来するオリジナルビール酵母の実用化もキリンビールと協同で進行中です。

 

タイムスケジュールとしては、今年中にホップや大麦など、京都産原料を一部使用したビールを限定醸造。2019年に現地製麦を開始して、2020年の京都スタジアム開業の年に京都産100%を達成することをゴールとしています。そして2021年以降は、地域の新しい経済エンジンとして稼働、関連産業への波及効果を狙います。京都が「ビアツーリズム」の地として国際的に認知され、京都をロールモデルとして国内各地への展開が期待されるところまでが、長い目で見たK100プロジェクトの全容。

壮大で夢のあるプロジェクトですね!

 

続いて行われた質疑応答タイムでは、メディアから数多く質問が寄せられました。

 

発表会後のフォトセッションでもテレビの取材を受ける篠田准教授。

事業規模や京都で発足した背景、実際にはどこで飲めるのか?これまで100%ローカル原料のビールはあったのか?など、時間ギリギリまで質問や意見が飛び交っていました。

 

「与謝野クラフトビール醸造事業」に取り組む与謝野町の山添藤真町長。

現在は4軒の農家で栽培している与謝野産ホップも年々収穫量を上げ、今後も町をあげてクラフトビール事業に向き合いたいと話します。36歳の若さと熱意あふれる町長です。

 

山添藤真町長がつけていたシルバーの「ホップバッジ」。

与謝野長の職人さんが作ったそうです。かわいい!

 

与謝野クラフトビール醸造事業のアドバイザーで、日本ビアジャーナリスト協会の藤原ヒロユキ氏も出席。与謝野でホップ栽培が始まったのは、藤原氏の奥様が与謝野町出身だったことがきっかけだそうです。ご縁がここまでつながるなんて素敵ですね。

 

そしてSVB京都に場所を移して、第二部の懇親会が開かれました。

 

懇親会にも大勢の関係者が出席し、早速名刺交換や情報交換が行われていました。会場は開始前から熱気にあふれています。

 

16時、SVB京都の人気商品「京都YOSANO IPA」を手に、篠田准教授の音頭で乾杯!

 

SVB京都のオリジナル商品「Kyoto 2017」をリピートしていた大麦の栽培農家さん。

小麦麦芽と京都産コシヒカリ使い、ヘッドブリュワー三浦がふくよかな味わいと飲みやすさを実現した「Kyoto 2017」をとても気に入ってくださったようです。

 

大麦やホップの生産者と京都のローカルビールの関わる人たちが一堂に介して、手掛けたビールを一緒に飲みかわす。とても希少な時間を過ごせて感慨深い思いでした。生産農家さんの日に焼けた笑顔が印象に残っています。つくった人の顔を見て、話しながらビールを味わう、シンプルだけど、なかなかない経験だと思います。

 

昨年、SVB東京で開催された「寿司フェス」をサポートしてくだった、京阪ホテルズ&リゾーツ株式会社執行役員 桑田朋之氏(左)とキリンホールディングス株式会社常務執行役員の溝内良輔(右)。これまでなじみがなかったお寿司×クラフトビールとのペアリングは、回転寿司業界でも大反響だったそうです。

 

一条寺ブリュワリーの横田ブリュワーから、京都府亀岡市産麦芽100%を使ったシングルホップのペールエールも配られました。麦の存在感を感じるボディがしっかりした味わいです。ブリュワリーごとの個性が楽しめるのがビールの魅力ですね!

 

K100の発起人、篠田准教授に「好きなビールは?」と聞いてみたところ、「目の前に出された1杯のビール」というお答えをいただきました。それが自分にとっておいしくないビールであれば、なぜおいしくないのか、原因を探る機会を得ることができるから、だそうです。探求心と好奇心にあふれた研究者らしいお言葉!

 

京都のビール醸造の始まりから140年を経て、京都産100%を目指してスタートラインに立った「K100」ビールプロジェクト。地域が一体となって取り組む新しい試みに目が離せませんね。

 

SVBでは今後もK100の動向をお伝えしていきます!