<Tour report>遠野BEER Tourism with SVB やっぱりビールがおいしいのは秋!

突然ですが、ビールが一番おいしい季節はいつでしょうか。

 

おそらく、「暑い夏にゴクゴク飲むのが一番おいしい!」と答える人が多いのではないかと思います。ですが、「おいしい」という言葉自体、主観が入るものですから、その答えは人それぞれ。春がおいしいという人もいるでしょうし、冬だという人もいるでしょう。一年中いつでもおいしい、という人もいるかもしれませんね。

 

では、私はどうなのかと言いますと、最近その答えを見つけました。

 

秋です。

 

9月2日(土)、3日(日)に催行された「遠野BEER Tourism with SVB」に参加したことで、その思いを強くしました。このツアーの様子をレポートしつつ、なぜ秋が一番ビールのおいしい季節なのか説明しましょう。

まずは伝承園でホップ和紙の紙すき体験

9月2日10時37分、ツアー一行は新幹線で新花巻駅に到着。台風が来るか来ないか……というギリギリのところで、曇り空ですが雨にはならずにすみました。新花巻駅からはバスに乗って遠野へ向かいます。

 

遠野は国内でも有数のホップ生産地。54年前からホップを栽培しているのですが、実はホップの生産量は年々減ってきています。これは遠野に限らず、国内のホップ生産量はどんどん減っているのです。

 

しかし、54年続いたホップ栽培を廃れさせるわけにはいきません。遠野は50年後の未来へつなげるために、「ホップの里」から「ビールの里」へとキリンとの協働によるまちづくりをスタートしました。

 

そんな遠野と国産ホップの現状を視察しよう(さらに楽しくビールを飲もう)というのがこのツアーの目的。

 

新花巻駅から1時間ほどバスに揺られると、最初の目的地「伝承園」に到着。

こちらは遠野のかつての農家の生活様式を再現している施設ですが、我々一行を出迎えてくれたのは地元の遠野緑峰高校の生徒たち。

実は、遠野緑峰高校ではホップの蔓から繊維を抽出することに成功し、その繊維だけを使ったホップ繊維100%和紙を作り出したのです。今回はそのホップ和紙の紙すきを体験し、コースターを作ります。

どろどろの繊維をすくって、その上に切り絵でデザイン。上から圧をかけて水分を抜き、乾燥させれば出来上がり!

 

世界に2つとないホップ和紙コースターをお土産に、次の目的地「遠野ホップ加工センター」へと向かいます。

ホップの香り漂う遠野ホップ加工センター

 

車窓からはのどかな田園風景。しかし、遠野が他の地域と少し異なるのは、こんな風景です。

平坦な土地に背の高い緑の植物。そう、ホップです。ところどころ圃場(ホップ畑)を目にすることができたのですが、ホップ栽培がピークだったころはどんな風景だったのでしょうか。これからの50年でどう変わっていくのか、見続けていきたいと思わせる風景です。

 

そしてやってきました「遠野ホップ加工センター」。

建物に近づくと、ホップの青々とした華やかな香り。参加者の皆さんも「すごくいい香りですね〜」と話しながら中に入っていきます。

 

着いたときはちょうど収穫したホップを加工するタイミングでした。

 

ホップの蔓をひっかけて吊るし、左奥のスペースで蔓と毬花を選別します。まさにホップ生産地でないと見られない光景に参加者の皆さんも大興奮。

 

皆さん撮影に余念がありません。

 

そして、蔓から分離した毬花は、ベルトコンベアで加工場の2階(といってもかなりの高所)へ運ばれていきます。

 

そこでは、毬花と葉や茎を手作業で選別していました。

失礼ながら「これくらいの量なら結構ラクな作業なのでは……」と思ってしまったのですが、数分目を離していたらこんなことになっていました。

大量のホップが流れてきているではないですか! 大変失礼いたしました。4名で選別しているようでしたが、これはかなり大変な作業ですね。

 

この後は、ゆっくりと動くベルトコンベアの上で、60度の熱風で乾燥させます。

ただ、キリンビールが毎年販売している「一番搾り とれたてホップ」に使うホップは、この工程がありません。今年の「一番搾り とれたてホップ」用のホップはすでに収穫終了したということですが、この乾燥工程を経ずに生のまま凍結して運ばれます。そうすることで、みずみずしいフローラルな香りが残ったままビールに使われることになるのです。

いよいよ圃場へ!

 

加工場の見学が終わったら、いよいよ圃場へ向かいます。

 

どうですか、この見事なホップ!

割ってみると、黄色いルプリン。さわやかなホップの香りが詰まっています。

 

ホップを摘んでいいということなので、いくつか摘んでみましたが、隣の畝では本格的な収穫作業が始まっていました。

 

少々わかりにくいかもしれませんが、前方にはトラクター、後方にはトラックがあります。

作業分担としては4つあるようで、トラクターを運転しつつ前方でホップ下部の蔓をカットし、上部でも鎌で蔓をカット。それを荷台に詰め込み、落ちたものを2人で拾いあげる、とう分担。私もミレーの『落穂拾い』ではないですが、「落ホップ拾い」をさせてもらいました。

 

ちなみに、遠野ではホップの収穫は輪番制になっていて、○月○日には誰の圃場で収穫というのが予め決められているとのこと。そして、遠野ホップ農協の組合員がその日収穫の圃場に出向いて収穫を手伝うそうです。

ホップに囲まれて乾杯!

収穫の見学が終わったら、このツアー最大の目玉、ホップ圃場で乾杯です。乾杯ビールは「コープランド」。

圃場で飲むというだけで最高の気分なのですが、圃場だからこそできるちょっとしたお遊びがこちら。

毬花を割ってビールに入れてしまいます。味わいはあまり変わりないものの、フレッシュなホップの香りがプラスされてすごいことに。

 

みなさん、十分にホップを堪能されたようですね。

さて、ここで冒頭の「一番ビールがおいしい季節は秋」という話に戻ります。

 

実は、ホップは俳句の季語にもなっています。ホップの季節は夏だというイメージがありますが、季語としては秋になります。暦の上で、立秋(2017年は8月7日)から立冬前日(2017年は11月6日)までが秋。

 

今回のツアーも暦の上では秋です。圃場で飲むビールは最高においしかったですし、フレッシュなホップを使ったビールが飲めるのも、やはり秋なのです。

 

今回見学した際のホップではありませんが、ここ遠野のフレッシュなホップが「一番搾り とれたてホップ」(10月24日発売予定)に使われます。そして、全国のブルワリーが造るフレッシュホップを使ったビールのイベント、フレッシュホップフェストも9月22日〜10月22日に開催されます。

 

そうそう、本場ドイツのオクトーバーフェストも秋ですね。遠野がホップ栽培に適しているのはドイツのホップ生産地に気候が似ていて、また盆地でもあるので1日の寒暖差が激しいからということだそうです。

 

そんなフレッシュホップの魅力がたくさんつまったビール、飲んでみたいと思いませんか。それが飲めるのは秋だけ。なので、秋が一番ビールのおいしい季節だと思うのです。

ツアーその後……

さて、見学を終えた一行は宿へ。

 

遠野のホップとビールへの関わりや、スプリングバレーブルワリーのマスターブリュワー田山智広によるホップ講座に聞き入り……

お待ちかねの宴会です! なんと「村上セブン」も。食事も遠野の名物ジンギスカンをはじめ、郷土料理のひっつみ、ホップを練り込んだソーセージ、新鮮なマッシュルームを使った卵かけご飯などなど、遠野の魅力を堪能し、夜は更けていきました。

そして、2日目。

 

岩手県を代表するブルワリー2軒を見学しました。まずは一関市のいわて蔵ビール(世嬉の一酒造)。

江戸時代から続く酒屋を受け継ぎ1918年に創業。1995年からは「いわて蔵ビール」として、多彩なビールを造り続けています。趣ある蔵を改装した建物でランチをいただきました。

 

そして、2軒目は盛岡市のベアレン醸造所。

100年近く前の設備を使って、ドイツスタイルのビールを造っています。煮沸釜は1907年の製造だとか。この日は稼働していませんでしたが、ここで造られた看板ビール「ベアレンクラシック」をいただいて、2日間に渡るツアーも終了です。

 

今回が3回目となった「遠野BEER Tourism with SVB」。リピーターの方もいらっしゃるようで、ツアーの内容も毎回違うものにしているとのこと。ツアーからまだ日は経っていませんが、来年の開催が非常に楽しみです。